あずーるの物置

作品置き場(予定)

ボイスドラマ用シナリオ『定期報告LX2338』

定期報告LX2338

宇宙からのメッセージ。「ハロー、聞こえているかな?こちらはLX2338、定期報告だ。」【不問2】

 

□登場人物

・A……メッセージを受け取った少年。性別不問。
・B……Aの友人。性別不問。

※プリ小説×ボイコネシナリオコンテスト(2021)投稿作品。

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◇通信電波。酷くノイズが混じっている。

 

B:テストテスト、ワン、ツー。
  ハロー、聞こえているかな?こちらはLX2338、定期報告だ。
  と、言っても、もうそちらが聞いてないのは分かってる。私はこの目で見たんだからね、本星の消滅を。
  せめてアイツだけでも生きていてくれればと思ったんだが……どうもそう甘くはないらしい。
  そこで、この記録は本星に向けてじゃなく、どこか適当な方角に向けて発信することにした。
  もし、どこかに届いたならその時は……返事が貰えると嬉しいかな。
  ではまた、次の定期報告で。

 

◇某日、某所。


A:……。
B:まだ聞いてるの、「それ」。
A:うん。
B:何処から来たかも分からないってのに。
A:それは分かってる。こと座のアルファ星――ベガって言った方が分かりやすいかな。
B:調べたの?
A:いや、でも間違いないよ。夏の大三角が綺麗に見えてて、アンテナをそっちに向けてたから。
B:ふーん。地球からそこまでの距離は?
A:……六百光年。
B:じゃあ無理だ。電波の主もとっくにご臨終だよ。
A:そうかな。
B:そうだよ。永いよ、六百年って。人間だったら百年そこそこが限界らしいし。
A:……だとしても、返事をしたい。
B:なんで。
A:多分僕だけなんだよ、あの電波が届いたの。それから一晩中考えた。あの人は、きっとどこか遠くの宇宙で一人きりなんだ。
  帰る場所も、待ってる人も無くなるってことがどんな気持ちかなんて分からないけど……独りになる不安は分かる。
  だから、伝えたい。ここに、あなたの声が届いた人が居るって。
B:……そっか。
A:あれ、変に思わないんだ。
B:何が?
A:他の人に聞いてもらっても、ノイズにしか聞こえないって言われるんだよ。
B:……そうだろうね。
A:え?
B:だって地球の人間はそんなに遠くまで行ってない訳だから、その電波は宇宙人からってことでしょ?普通は何を言ってるのか、そもそもそれが言語なのかすら分からないと思うけどなあ。
A:あ、確かに……でも、それならどうして……?
B:ふふ、やっぱり変わらないな、キミは。見ず知らずの人間に感情移入するところも、肝心な時に今一つ頭が回らないところも。
A:う、うるさいな!これでも機関の採用試験じゃ主席だっ、た……あれ?
B:何か、思い出してきた?
A:そう、だ。なんで忘れて……じゃあ!
B:こほん……テストテスト、ワン、ツー。
  ハロー、聞こえているかな?こちらはLX2338、久々の定期報告だ。


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